あとがきにかえて

 あとがきにかえて――神谷京介のカラオケ日和――

 一月二十九日(金) ミュージックルームロイヤル
  歌った曲
・傘がない(井上陽水:演奏が派手めで原曲とだいぶ違ってたような)
・白いカーネーション(井上陽水:ほとんどまともに歌えずじまい)
・長い猫(井上陽水:これもほとんどまともに歌えてない。リベンジの必要性あり)
・招待状のないショー(井上陽水)
・VALON-1 (Salyu) 
・言わせてみてぇもんだ(Mr.Children)
・口笛(Mr.Children)
・ストレンジカメレオン(Mr.Children)
・スロースターター(Mr.Children)
・Dance Dance Dance(Mr.Children)
・Hello, Again 〜昔からある場所〜(My Little Lover:最後の「ハローアーゲインアフィーリンハート」を可愛らしく歌う)
・新しいラプソディー(井上陽水)
・My House(井上陽水)
・夕立(井上陽水)
・しるし(Mr.Children:一番持ち歌にしたい曲だがキーが高すぎる。最大の壁)
・ふりぃ(阿部真央:真央さんの曲なら「情けない男の唄」を歌いたかったが、載ってなかった)
・Triangle(SMAP)
・キレイな唄(阿部真央)
・招待状のないショー(井上陽水:二回目)
・氷の世界(井上陽水:「毎日、吹雪、吹雪 氷の世界ぃ~」のとこを歌うのがめちゃくちゃ気持ちよかった)
・この頃、妙だ(井上陽水:最大の壁第二弾。サビはたぶん陽水先生本人しか歌えない)
・名もなき詩(Mr.Children:早口部分を案の定噛む)
・ひびき(Mr.Children:軽く歌える曲を選んだつもりが大誤算)
・All by myself(Mr.Children:間違えて決定ボタンを押す)
・ロードムービー(Mr.Children)
・Tomorrow never knows(Mr.Children)
・御免(井上陽水)
・小春おばさん(井上陽水:画面にガチのおばさん(和装)が出てきて焦る。こんなイメージの歌じゃないのに)
・少年時代(井上陽水)
・Just fit(井上陽水)
・白いカーネーション(井上陽水:リベンジ。ちゃんと歌えるようになって一安心)
・帰れない二人(井上陽水)
・NOT FOUND(Mr.Children:アップダウンが激しすぎて途中で断念)
・TEENAGER(井上陽水:サビのコーラス部を歌ってくれる人が誰もいない)
・嘘つきダイヤモンド(井上陽水)
・優しい歌(Mr.Children)
・東へ西へ(井上陽水:電話のため中断)
・独り言(Mr.Children)
 
 初めての一人カラオケ、というかカラオケで歌うこと自体初めてに近かったので本気で緊張した。二曲目「白いカーネーション」はわりと低めのキーだったためすべての歌声がこもってしまい、自分でもほぼ聴こえないという醜態をさらし、挫折&自己嫌悪しはじめる。しかし「口笛」を歌った辺りから「ひょっとして女性の曲じゃなくても、この一個上のキーで歌った方がいい(歌いやすい)んじゃないか?」ということに気づく。「新しいラプソディー」でその唱法が確立されはじめ、「しるし」や「Triangle」辺りは高すぎて現時点では手の出せないところがあったものの、そのちょっとあとの「招待状のないショー(二回目)」「氷の世界」でおおかたモノにする。しかし直後、「この頃、妙だ」の早口&サビ部分であえなく粉砕される。三時間でも短く感じ、最後まで「延長していいですか?」と言おうか迷ったが結局、電話が来たあとに「独り言」をしっとり歌いきり、店を出る。
 本日のベストアクト:「My House」「氷の世界」「嘘つきダイヤモンド」

 二月三日(水) ミュージックルームロイヤル
  歌った曲
・優しい歌(Mr.Children)
・少年(Mr.Children:たぶん後半になったら歌えない歌)
・水上バス(Mr.Children:これも右に同じ。ミスチルはほんと難しい)
・招待状のないショー(井上陽水)
・自由への招待(L’Arc~en~Ciel:履歴から見つけた。その人はちゃんと歌えるのだろうか)
・感謝知らずの女(井上陽水)
・Money(Pink Floyd:よくわからなくなって中断。チャレンジが早すぎた)
・ロックンロール(Mr.Children)
・LOVEはじめました(Mr.Children)
・ランニングハイ(Mr.Children)
・氷の世界(井上陽水:タメとかイントネーションを若干イジるとかもできるようになった。現時点では一番の鉄板)
・貴方の恋人になりたいのです(阿部真央:キーをだいぶ低くして歌ってたような気が)
・ニシエヒガシエ(Mr.Children)
・Everything (It’s you)(Mr.Children)
・風と星とメビウスの輪(Mr.Children)
・アジアの純真(井上陽水奥田民生:意外と声を張る曲。本当は根詰めて歌うような曲でもないのだが)
・Make-up Shadow(井上陽水)
・夜のバス(井上陽水)
・CENTER OF UNIVERSE(Mr.Children)
・つよがり(Mr.Children)
・たいくつ(井上陽水)
・長い坂の絵のフレーム(井上陽水)
・夕立(井上陽水)
・HANABI(Mr.Children:たまりにたまった疲労がここにきて爆発)
・帰れない二人(井上陽水:何とか持ち直そうとして定番を入れる)
・なぜか上海(井上陽水)
・青空、ひとりきり(井上陽水)
・フェイク(Mr.Children:ここらへんで隣の部屋に学生の集団がやってくる。ちなみにエグザイルとか歌ってた)
・新しいラプソディー(井上陽水:楽にちゃんと歌える定番)
・僕らの音(Mr.Children)
・傘がない(井上陽水:たぶん今日一番の出来。とにかく声が出たし、艶も出せつつある。これも鉄板)
・くるみ(Mr.Children:サビが嫌になって断念)
・嘘つきダイヤモンド(井上陽水:この曲が一番声を張れる。自分でもびっくりするくらい)
・いつの日も(阿部真央:サビ前が高すぎて断念)
・おやすみ(井上陽水)
・Good,Good-Bye(井上陽水)
・Image(Mr.Children)
・Over(Mr.Children)

 カラオケには体力も精神力も必要だということを思い知らされた日だった。「HANABI」をピークとして、後半になるにつれどんどん歌い方が散漫になっていたような気がする。今度からちゃんと休憩入れて、歌うときはしっかり集中して歌うというスタンスでいこうと思う。「HANABI」はコンディションの調整次第で高音にも手の届く歌だと思うので次は頑張りたい。高音以外ではやはり裏声。「くるみ」「つよがり」「Over」などはそこがポイントになるだろう。うしろのふたつは大体歌うにつれて声の出し方を掴んだので、次で完璧にしたい。まあ、ミスチルは置いといて、陽水先生の「傘がない」「氷の世界」辺りは誰に聴かせてもいいような出来になったと思う。このふたつが今のところ僕の鉄板。今日学んだこと、ミスチルは前半のいいタイミングで歌え。
 本日のベストアクト:「Everything (It’s you)」「氷の世界」「傘がない」

 二月八日(月) ミュージックルームロイヤル
  歌った曲
・結詞(井上陽水)
・HANABI(Mr.Children:最後の「もういっかぁーいっ」だけが声を出し切れなかった)
・Dialogue(Salyu)
・I’LL BE(Mr.Children)
・Simple(Mr.Children)
・嘘つきダイヤモンド(井上陽水:前回のほうが出来はよかった。気が抜けてたのが原因か)
・心もよう(井上陽水)
・蘇生(Mr.Children)
・and I love you(Mr.Children:観念して途中で断念)
・スニーカーダンサー(井上陽水:陽水先生の曲のファルセットはなぜだかちゃんと出せる)
・風と星とメビウスの輪(Mr.Children:ラスサビ前で力尽きる。今回はこのパターンが多かった)
・君が好き(Mr.Children)
・エソラ(Mr.Children)
・新しい恋(井上陽水:口の開け方のレッスンみたいな曲。陽水先生からのご教授って感じ)
・Sign(Mr.Children:もうちょっと力出れば完璧なのになぁ)
・つよがり(Mr.Children:これもラスサビ前に力尽きるパターン)
・自己嫌悪(井上陽水:よって、そんな自分を嫌悪する)
・限りない欲望(井上陽水:よく声が伸びてた)
・氷の世界(井上陽水:テンポを一段階早める。歌いにくくなっただけだったような気が)
・僕らの音(Mr.Children:アーアァーがどうしても出せない)
・終わりなき旅(Mr.Children:ラスサビに思いをこめすぎてグダグダになる。ほどよい冷静さも歌には必要)
・いつの日も(阿部真央:この辺りから「ミスチルは一時間くらい禁止にしとこう」と思い立つ)
・クレイジーラブ(井上陽水)
・最後のニュース(井上陽水:意外とちゃんと歌えた。ちょっと走ってたが)
・長い坂の絵のフレーム(井上陽水)
・タイランド ファンタジア(井上陽水)
・夕立(井上陽水)
・もっと(Mr.Children)
・youthful days(Mr.Children)
・CANDY(Mr.Children:コンディション次第で完璧に歌える、と思いたい)
・Everything (It’s you)(Mr.Children:なんでこの曲だけこんなに喉が開くんだろう)
・HANABI(Mr.Children:二回目。疲労のため、一回目より格段に落ちる)
・ロンドン急行(井上陽水:よってほのぼの系の曲で釣り合いを取ってみる)
・小春おばさん(井上陽水)
・傘がない(井上陽水)
・しるし(Mr.Children:くるぞくるぞ(高音が)と思ったら喉が引きつるという知恵袋の回答のまんま)
・旅立ちの唄(Mr.Children:一回だけ声をちゃんと張れた時があり、その感触をキープすることが今後の目標)
・言わせてみてぇもんだ(Mr.Children:ここらへんから隣にファンモンとか歌う学生たちがやって来る)
・人生が二度あれば(井上陽水:微妙にサビの音程がつかめない)
・あかずの踏み切り(井上陽水)
・youthful days(Mr.Children:二回目。裏声さえスムーズに出来ればなぁ……) 

 無意識的にだが休み休みで歌ってたようで、前回より一時間多くいたのにあまり曲数が変わってないことがそれを示している。ちなみに隣におばあちゃん二人(多分)がいて演歌ばかり歌ってた。「HANABI」の一回目がほぼ歌えたのは本当に嬉しかった。二回目は体力負けで大サビから全然だったが。「終わりなき旅」も体力の補強次第でどうにでもなりそう。「youthful days」「CANDY」は裏声をもうちょい器用にすれば完璧。完璧といえば「傘がない」はもう完璧過ぎて歌うたびに気持ちよくなる。「もっと」や「しるし」更に「旅立ちの唄」まで歌えないのには参った。あれは体力のせいなのか、僕の現時点での限界なのか……。総じて、「まだ未完成だけどもうちょっと詰めればモノに出来る曲」がいくつか見つかり、ベストアクトこそ少ないものの収穫はそれなりにあった日だった。あと、便所の手洗い場の水を飲めばいいということも学べた。
 本日のベストアクト:「限りない欲望」「Everything (It’s you)」「傘がない」

 二月二十四日(月) ミュージックルームロイヤル
  歌った曲
・傘がない(井上陽水:予想以上に声が出ない。二週間のブランク)
・youthful days(Mr.Children)
・君が好き(Mr.Children:原曲キーにしたら意外ときれいに収まった。今日のベストアクト)
・Sign(Mr.Children:やっぱり前半はだいぶ歌える)
・HANABI(Mr.Children)
・娘がねじれる時(井上陽水)
・新しいラプソディー(井上陽水)
・ふりぃ(阿部真央:途中で演奏中止)
・終わりなき旅(Mr.Children:大サビ以降が続かない)
・one two three(Mr.Children:猪木の声って誰がやってんだ……?)
・やわらかい風(Mr.Children)
・5月の別れ(井上陽水:これが歌いたいがために行ったようなもん)
・ALIVE(Mr.Children)
・旅立ちの唄(Mr.Children:やはり大サビ以降が悲惨)
・Any(Mr.Children)
・旅人(Mr.Children)
・しるし(Mr.Children:途中で演奏中止)
・名もなき詩(Mr.Children:あれ? こんなにキーが高い曲だったっけ)
・帰れない二人(井上陽水)
・口笛(Mr.Children:途中で演奏中止)
・Mirror(Mr.Children)
・アジアの純真(井上陽水奥田民生)
・帰郷(危篤電報を受け取って)(井上陽水)
・夢の中へ(井上陽水:裏声のウフッフーはコツ次第)
・白い一日(井上陽水)
・安らげる場所(Mr.Children)
・夕立(井上陽水)
・HERO(Mr.Children:途中で演奏中止)
・Be-Pop Juggler(井上陽水:遂に陽水先生の歌でも声が出なくなる)
・少年時代(井上陽水)
・Tomorrow never knows(Mr.Children:途中で演奏中止)
・おやすみ(井上陽水)
・独り言(Mr.Children)

 自分に歌の才能がないことは薄々感づいていたが、今日になってようやくそれがはっきりとした。よって、僕は今日でカラオケをやめる。急な決断だが決まったものはしょうがない。
 行ったら行ったでとても楽しいが、歌唱力が日増しに上がるわけでもない。何より隣の部屋が気になる。ミスチルはキーが高すぎて歌えない。基本的に隣はエグザイルを歌う。プロの歌手を目指しているわけでは無論ない。
 自分の声を携帯電話で録音して聴いた瞬間、何か大きなものに裏切られたような気がした。その歌声は、どこにでもいるただの男だった。とても哀れで、卑しい声だった。そのことにいたく傷付き、もうカラオケに恋なんてしまいと固く決意した。よって、僕は今日でカラオケをやめる。単なる趣味だから簡単にやめられる。ただ、いつか恋人ができた時に歌いたかったラブソング、それだけが心残りで。……もうちょっと練習して、上手くなりたかったなぁ。
 小説にも、こうやって裏切られる日が来るのだろうか。今のところ自分の書いたものに裏切られたおぼえはないが、これから先、あるいは今よりずっとつまらない人間になっていくだろう僕、そんな僕の書いた小説に、今日の日のように裏切られる日が来ないとも限らない。いや、必ずそういう日は来るだろう。
 その時、僕はどうするだろうか。きれいさっぱり物書きをやめるだろうか。性懲りもなくつまらない作品を書き続けていくだろうか。
 何にしろ、とても不安だ。 
 何はともあれ、最後まで読んでくださりありがとうございました。
 今度は、あなたの記憶のお話が聞きたいです(男なら別にいいです)。

2010年3月 神谷京介


初出:神谷京介短編集Ⅱ 星屑タロット (2010年3月)