高校三年生時に執筆していた作品で、その後は就職して執筆と徐々に疎遠になっていくので、旺盛に書いていた時期の最後の作品群になります。ちょうど高校三年生の春休みくらいに書き上げたのでしょうか。『チーズ』などはそのころの「僕は高知を出ていく」という気持ちが全面に出ていたのだとふりかえって感じます。それはつまり、人生のステージが変わることは知ってはいるけれど、体験するのは未来なので実態がつかめない。それでも刻一刻と時は過ぎていき、子どもの僕でいられる時がもうほとんどカウントダウンできるほどしか残っていない、そういった寂寞がずっとあったように、読み返すと思います。
このころの僕にとって小説は人生のすべてだったのです。小説を通して永遠を見つけ出すことが。
(と、かっこつけて言えるくらいにはとてもとても真剣で、非常にこうなんというかシリアスでした)
これ以前の作品もたくさんあるけれど、なかなか出すのには勇気がいります。いわゆる製品的な完成度はなかなか期待できないようなものだからです。良くも悪くも本作は十代の小説家としての総決算でもあり、それもおそらく無意識にわかっていて、ちゃんと読めるような構成、ちゃんと読めるような内容、ではあるようになってはいるはずです。作品の並び順は(レコードやCDの)アルバムを意識していたような気がします。『クライシス』が最初で『チーズ』が最後で、ボーナストラックとして『夢で見た女』があるようなイメージをしていたような気がします。
特に小説を書き始めるようになってから、そしてその後の人生において、女性という存在は僕の中でとても重要な位置を占めています。本作を読み返したときまず思ったのが、女性への執着エグいな……ということでした。あとがきに「男なら別にいいです」と書いてるのを見たときは思わず笑ってしまいました(その辺のちょっとした肩の力の抜け具合も本作のポイントで、『追憶』を夏に書き上げたから、の安堵感もたしかにあったのでしょうね)。これは芸術家としてはよいことなのだと思います。十代の僕が書く原動力は渇望であって、それがなくなってから、次の原動力を探すのに苦労したのが二十代だったのだと思います。あのころの僕はずっと、安全な場所に帰りたい、それだけを願って生きてきたような気がします。
2026年1月11日 神谷京介
初出:Works 神谷京介 (2026年1月11日)